STAR FRUITS SURF RIDER GIRLS: 編集後記
※この記事には少女終末旅行の若干のネタバレがいくつか含まれます。ご了承ください。
始めに
この記事では僕と他数名で制作したStar Fruits Surf Rider Girlsについて色々書いていきたいと思います。色々書きすぎて合計一万字を超えてしまったので、興味があるところだけ読むことをおすすめします。
動画を見ていただいた方は気づいていると思いますが、この動画は「2つの独立した動画をそれぞれ投稿し、同時再生版を実写で撮影して投稿する」というアイディアにのっとって制作しました。原曲のポテンシャルに乗っかった動画ではありますが、それなりに独創的なことができたんじゃないかなという思い上がりの元、このような形で記事を書くことにしました。
(ただ単に今まで自分が関わった動画の中でも特に長い時間をかけたので、いろんな人にプロセスを知ってほしいというのが本音)
パート分け詳細
なななんと!僕含めて7人での制作になりました!プチ合作です!
正直制作当初はここまで多くの人が関わることになるとは思ってもいませんでした。一人でも欠けていたら完成しなかったと思うと、感謝してもしきれません。手伝っていただいた猛茸さん、オンモコスブさん、冬眠しますさん、ねこぱらさん、Lixyさん、尾木メモさん、ありがとうございました!
作ろうと思ったきっかけ
流行り関係なしに自分の好きな曲で作ってみたかったというのが正直な理由です。ただ共有垢という場所で出す以上、なにかしらすごいギミックを組み込んでみたかったので、こういった形の動画になりました。
曲は今年の1月辺りに見つけていましたが、自分の技量不足で制作を諦めていました。
状況に変化があったのが2月です。いわゆる団体垢である「強烈誘拐」に招待され、動画制作に対してストイックな人たちとの交流が始まりました。運営鯖のメンツや雰囲気から、形にすることができるような気がしてきたので、曲とアイディアをメンバーに紹介。メンバーの一人である猛茸さんの得意素材である少女週末旅行が曲の雰囲気にかっちり合いそうだったので、スプレッドシートに企画をまとめて制作を開始しました。
曲と作曲家に関して
蛇足かなと思いましたが書いた方がいいと思ったので書きます。
この曲は原曲の時点で2つで1つの曲というフォーマットが確立されていました。作曲者のCorneliusこと小山田圭吾は20年以上も前にこの曲を出しました。はっきり言いましょう、彼は音楽の天才です。何か月もの間この曲に向き合う中で、この曲そしてこの曲を生み出した作曲者への愛着のようなものが形成されていった気がします。
だからこそ、僕は彼が学生時代に行っていたという半ば拷問に近いいじめの話を、これ以上ない衝撃をもって受け止めました。
実はこの動画が完成したのは、彼がオリンピックの開会式の曲の作曲家に任命された直後、彼の過去の蛮行がSNSを通じて拡散されていた時期の事でした。僕らも制作開始時こそ知らなかったものの、彼の過去については制作途中に知るに至り、制作/公開を取りやめようかと何度も悩みました。ただ結果から言えば、僕は動画を出してよかったと思っています。
僕は作曲者と作品を切り離すことが可能だとは思ってもいませんし、作曲者のことを許そうと思ったこともありません。小山田圭吾は存命中の人間で、僕らもまた彼と同じ時代を生きる人間です。全部忘れろなんて無理な話でしょう。しかし、僕らはこの動画に込めた愛が、原曲の作者の過去の過ちで揺らいでしまうような弱いものではないと信じています。曲の持つポテンシャルを信じてこの動画を作っていた僕たちのことをどうか許してください。そして、原曲を使わないと決めた僕たちの決心を、楽曲を作曲者から開放するためのささやかな反抗だと受け取っていただければ幸いです。
素材の把握と方向性の決定
僕は立案時点で『少女終末旅行』を見てなかったので、急遽視聴することにしました。普通のアニメ鑑賞と違った点といえば、素材として使えそうな場面を逐一タイムスタンプと共に記録したことです。これによりアニメの構成や展開に対して深い理解が得られたと感じています。
また視聴していく過程でチトとユーリという二人のキャラクター性がStar Fruits GreenとSurf Rider Blueという2つの曲の特性にマッチしているような気がしてきました。「慎重で思慮深く内省的なチト=優しいギターとハスキーなボーカルが魅力的なGreen/感性を信じる勇敢な冒険家であるユーリ=激しく展開するリードシンセとブレイクビーツが特徴的なBlue」という二項対立が僕の頭の中で完成し、「それぞれの曲をそれぞれのキャラクターの音だけで作る」という方針が固まりました。
音声と同じように独立した動画を2つ作ることにしましたが、最終的にスマホ2台並べて同時再生したいなと思い、音MADでは珍しい縦画面にチャレンジすることになりました(ここら辺のアイディアはオンモコスブさんが出してくれました)。このあたりから2つの縦画面を横断的に活用する絵作りやスマホの外側も巻き込んだ映像づくりを妄想したりしていました。
音声制作(3月23日~4月4日)
構想の時点では映像の全体像は全く見えていなかったので、とっとと音声を仕上げて物事を前に進めようと決心します。企画段階で僕があらかた耳コピを終わらせていたことや、猛茸さんの素材への高い理解度が幸いし、制作は比較的スムーズに進行しました。とはいえ原曲不使用x2となると相当な音数になり、最終的なミックスでは合計100トラックを超えるのとてつもない音源になりました。
音声のパート分け
パート分けは一人一曲を仕上げることにしたため、言い出しっぺの僕がGreenパートを取りました。というのも、Blueはパーカッション周りが複雑で、僕では技術的に手が届かない気がしたので猛茸さんに押し付けました。(信頼のなせる業であり、決して搾取ではない)。
Green(音声)について
使用ソフト・VSTなど
色々使ってますが有償プラグインはentoropyEQ+とBalancerぐらい(これらも無償配布で手に入れた)なので、僕の音声に関してはほぼノーコストでの制作です。
おすすめしたいのはSK10、Sanford Bassあたりのベースアンプ/エンハンサー。音が太くなります。
使用した音
アニメ本編からまんべんなくサンプルしました。スイッチの切り替え音以外はチトから取ってます。
プロセス
・人力の素材はチトのキャラソンやOP/EDのソロパートから頑張って抜き出しました。足りないところはオンモコスブさんが持っていた、同声優であるごちうさのチノの音素で補いました。キャラが違うと少し声色もちがってしまうので、必要最低限に抑えています。
・切り貼りやピッチ変更は「なめうぇーぶ」(utauのようなピアノロール風のシーケンサーとwavから音素を切り出すモジュールが一体になったもの)を使用して行いました。少し癖のあるUIでしたが、切り貼り人力ボーカロイド制作に最適化されていてかなり便利でした。
使ってみたい人はこの動画シリーズを見ると良いと思います。僕のこの記事を読んでください(ちゃっかり宣伝)。
・なめうぇーぶの作業をwavにレンダリングしたのちにReaperでめんどくさい後処理を行いました。テイクごとにタイミング・eq・フェーダーをいじったりしました。違和感がある個所は音素ごと取り換えたりしました。
・音合わせ。シンセ、ギター、ストリングと構成はかなりシンプルである半面、雑に作ると誤魔化しが効かないため結構大変でした。レイヤリングを多用したり普段以上にEQを詰めました。ギターはシンセらしく加工したトラックとサンプルを直接並べたトラックをブレンドしてそれぞれの足りない音域を補完し合っています。
Blue(音声)について(feat. 猛茸)
Blueに関してはほぼ全面的に猛茸さんに作っていただきました。
制作過程を書きたかったんですが、猛茸さんが誤ってpfを削除してしまったため、制作過程は永遠に闇の中です(これもう世界遺産の消失だろ)。
音声まとめ + セリフ合わせについて(feat. 猛茸)
僕のパートをステムにして猛茸さんに送信し最終的なミックスダウンをやってもらいました。greenとblue合計で100トラック超えてるのに3日ぐらいで返ってきて驚愕した記憶があります。才能が怖い。
セリフ合わせも一番作品への理解度が高いであろう猛茸さんに作ってもらいました。二つの動画をまたぐ会話劇や、歌詞に呼応した合いの手など小ネタ満載のセリフ合わせになりました。最高です。彼の働きなくして後の映像の構成はあり得なかったので、本当に感謝&尊敬しています。
なんやかんやスムーズに完成した音声。この時点で暦の上ではまだ4月。ここから4ヶ月間もの間映像を作り続けることとなります。
映像制作(4~7月)
もともとはオンモコスブさんに全部作ってもらおうかと思っていましたが、負担からして現実的ではありませんでした。結果として動画の大部分を僕が作ることになりました。大変だったけどこの動画の制作が僕の中で大きな自信になったと思います。
ワークフロー
複雑な動画だけあってそれなりにめんどくさいことをしています。動画は主にAviutlで作り、Rootと2つのSceneを別個のmp4に出力し、それらを別々のデバイスに表示して撮影しました。最終的なエンコードと撮影は機器を持っていたオンモコスブさんにやってもらいました。(画像拡大推奨)
実写を取り入れたことで天然の色ずれやインターレース、露光調整が加わり、動画の雰囲気がグッとよくなった気がします。
コンセプト・方向性
9:16の縦比率で2つの動画を作り、最後に実写で撮影するということが決まっていたため、小窓の中の映像はあまり情報量が多くなりすぎないように、切り貼りメインの構成にすることにしました。
いままであまり見てこなかった切り貼りMADやAMVを見て技法を学んだり、ニコニコに上がっているアニメMADを何度も見たりして参考にしました。
共作に当たって
作業量からして複数の人間で作ることは明確だったので、動画の統一感を出すためにPinterestの共有ボードを制作しました
また、違うソフトでも似たような質感を目指すために、ルミナンスキーやエッジ抽出といったキーとなるエフェクトを選定したり、図形を使いまわしたりました(いわゆるトンマナ?の統一というやつ)。
「SFSR」のアイデア 100 件【2021】 | デザイン, グラフィックデザイン, ポスターデザイン
使用ソフト
・AviUtl
一部のシーンはオンモコスブさんがAfter Effectsで作ったものと僕のシーンをオーバーレイしたりしていますが、僕の担当に関していえばAfter Effectsは使用していません。切り貼りのしやすさやシーンを使った並行作業など、この動画の制作を通してAviUtlの強みを再発見できた気がします。またオンモコスブさんによる最終的なエンコードにもAviUtlを使っています。
・Blender
今までの動画でもちょくちょく使っていましたが、今回は大々的に使用しました。写実的なスタイルではなくモノクロに様式化されたルックスだったので、初心者の僕でもある程度映えるものが作れました。
・Gimp
Photoshopを持っていない僕が切り抜きで使用しました。
・After Effects(尾木メモ氏、オンモコスブ氏、冬眠します氏)
僕はAdobeにまだ魂を売っていないので使っていませんが、冒頭のモーションや2番のサビはAdobeユーザーの方々に作ってもらいました。
・Photoshop(尾木メモ氏、ねこぱら氏、オンモコスブ氏)
ねこぱらさんが手書きアニメーションを描くときやオンモコスブさんが漫画のマスクを切るのに使っていました。使用者らによると「Adobeの唯一褒められる発明」らしいです。
よく使ったスクリプト(AviUtl)
・キャッシュ保存RM
・キャッシュテキスト
・Aod_test47
・値で図形
・opencvスクリプト(特にエッジ抽出)
・aodaruma氏のスクリプト
・さつき氏のスクリプト
・ティム氏のスクリプト
・rikky氏のスクリプト
・93氏のスクリプト
シーン別解説(アホ分量注意)
ここから先は動画をセクションに分けて、使った技術や作るときに考えていたことをつらつらと書いていきます。
マジで興味ある人以外は適当に流しちゃって問題ないです。横で動画を見ながら読むとちょっとは分かり易いかもしれません(結構分量あります)。
・壁紙, 冒頭のモーション | 00:00~00:05 | 尾木メモ, あるくおすし
投稿当日の夜になって尾木メモさんに急遽依頼し作っていただきました。遅い時間の無茶なお願いだったのに爆速で満点のものを出していただいて面くらいました。ここだけの話、輪の個数に隠されたメッセージがあるとかないとか?
あと最初に画面に映っている2つの画像は、僕がAviUtlで作ったものです。それぞれの動画のサムネを壁紙用のレイアウトに変えたものですね。デザインスタジオであるThe Designers Republic辺りの雰囲気を真似しました。結構気に入ってて自分のスマホの壁紙にしています。
#sm39040925 スマホの壁紙としてお使いください pic.twitter.com/nkNyxIzwGU
— あるくおすし (@walkingsushibox) December 31, 2021
・イントロ① | 00:05~00:41 | あるくおすし
しっとりとはじまる動画を目指していたのでシンプルなつくりになっています。2人の旅行がテーマのアニメなので、足跡を音にハメたら面白いかもしれないという安直な発想で背景を作りました。細かいパーティクルにはRikkyさんの拡張パーティクル(R)を使用しています。
・イントロ➁ | 00:42~00:53 | あるくおすし
「音楽」や「リズム」を抽象的に表現したくて、それっぽい曲線を引きました。外部スクリプトは使っておらず、ライン(移動軌跡)という標準のカスタムオブジェクトを使っています。詳しくはこの記事を見てください。
・イントロ③ | 00:53~01:17 | あるくおすし
結構気に入っている部分です。背景が不思議な動きをしていますが、キャッシュ保存RMという外部スクリプトの活用です。このスクリプトは一時保存読み込みEXTというかつて存在したスクリプトのリメイクで、基本的な仕様は同じです。
これを使うと「1フレーム直前の描画結果をキャッシュに保存し、現在のフレームで呼び出してまたキャッシュに保存する」といった再帰的な画面作りが行えるようになります。文章ではいまいち伝わらないと思うので、93さんによるチュートリアルを見ることをお勧めします。
後の局所的なモーションブラーや日周運動の軌跡のようなエフェクトもこれを使って作っています。
・1番① | 01:17~01:22 | あるくおすし
歌詞に合うちょうど良いシーンが見つかってよかったです。
シーンに溶け込ませるような歌詞の表示はふぉーさんによるLQSERというMADを参考にしています。素晴らしい動画なのでぜひ見てみてください。
背景の街並みはBlenderを使って作っています。平面にParticleを使って長方形のメッシュを配置し、Cell Fractureという標準アドオンを使って作った瓦礫を散らばせました。
全体にWiferrameモディファイアーをつけて白色のマテリアルを割り当てることで線描風の見た目を実現しています。
以下、参考にしたチュートリアル
・1番➁ | 01:22~01:29 | あるくおすし
小窓の中の映像は引き続き切り貼りで作っています。疑似的なモーショントラッキングは、中間点をたくさん打つことで再現しました(要はごり押し)。
背景の風車は本編11話の風車のシーンを参考にモデリングしました。
自然物を使わずに自然を表現するのエモすぎる。
・1番③ | 01:29~01:36 | あるくおすし
小窓で見上げる動作をしているので、背面では重力に引き込まれていくようなモーションを配置して動きにメリハリをつけました。つづく連星のような図形も含めて星というシンボルを強く意識しています。
・1番④ | 01:36~01:41 | あるくおすし
きれいに整列している文字は、93さん作のTA-Align@Ta-Trackを使用して作っています。以下の記事が参考になります。
背景の徐々に収斂していくようなパーティクルは、拡張パーティクル(R)の出力オプションに、ePiさん作の汎用トラックバーを適用することで実現しています。
拡張パーティクルの出力範囲はダイアログから設定するため、本来値を移動できません。しかし、ePiさんの汎用トラックバーを使うとダイアログの値でもトラックバーで制御できるようになるのです!
使い方に関してはスクリプトに同梱されている「使い方.txt」が一番よくわかるのでそっちを見てください(配布場所↓)
・1番サビ | 01:36~02:05 | あるくおすし
音に合わせてかなりの速さでシーケンスを切り替えています。ここは3つあるサビの中でも一番最初に作ったので、ネタが豊富で比較的スムーズに作れました。
技術的に解説することはあまりないんですが、1つ上げるとすればキャッシュ保存RMを使ったモーションブラーの描画です。後方に歪曲していく円には曲面変形を適用しており、このオブジェクトをキャッシュ保存RMで挟むことで残像が残るようにしました(1:47~1:48, 1:59~2:01 も同じ原理)。
・2番① | 02:06~02:28 | あるくおすし
サビで密度の高い動きをたくさん入れたので、ここではゆったりとした画面作りを目指しました。ちーちゃんの朗らかな現実主義者としての側面が伝わるようにモチーフを選んでいます。
ここではアニメ本編・吹き出しのモーション・飛行機・CGの葉と全く異なるフッテージを組み合わせていますが、2値化とエッジ抽出を使って画面に統一感を持たせました。
葉っぱのCGにはpattern ditherというスクリプトを掛けています。どこかのDiscordの鯖で公開されていたものなので、今は手に入れられないかもしれません......すみません。
参考にしたチュートリアル
・2番➁ | 02:29~02:35 | あるくおすし
1番①で使用したビルのモデルをそのまま流用し、別のカメラの視点でレンダリングしています。歌詞のなじませ方も1番からあまり変わっていません。ユーリの頭の上にある文字はTA-Align to Bezier@TA-Trackを使用して並べています。トラッキングは相変わらずごり押しです。
・2番③ | 02:35~02:40 | あるくおすし
この動画の微ネタバレ要素であるヌコに言及するシーンです。
これは劇中で明らかになる設定なんですが、ヌコは火薬やガソリンといった反応性が高い物質を好んで摂取します。そのような設定を反映し、ヌコに関係する物体として給油缶を選んで背景に配置しました。
給油缶がそのすぐ後に登場する「火」のシーンとつながっていて、個人的に気に入っています。
この給油缶はチュートリアルを見ずに自力でモデリングしました。慣れない作業でしたが満足いく結果になったと思います。
また、給油缶の浮遊はフォースフィールドを使って作っています。
・2番④ | 02:41~02:53 | あるくおすし
個人的にモーションが一番うまくいったと思う箇所です。歌詞に登場する3つのオブジェクトをシームレスにつなげることができた気がします。
使用したスクリプトはティムさん作のスプリットと集中線T、そしてrikkyさん作のディザリンググラデーションです。
・2番サビ | 02:53~03:17 | 冬眠します(背景), あるくおすし(小窓)
背景を冬眠しますさんに担当していただいたパートです!!!!
最終的なエンコードはオンモコスブさんにやってもらうことになっていたので、僕は公開まで一度も目を通していませんでした。なので投稿後に初めて目にしたときは、度肝を抜かれて言葉を失ってしまいました。
どのシーンも静止画としての完成度が非常に高い上に、モーションがしっかり練られていて、何回も見てしまいます。個人的にはカメラのモチーフのはめ込み方が好きです。
フィルムリール?らしきものがちゃっかり入っている。
ちゃんと前景のモチーフを拾っている。神。
冬眠しますさんからの所感もいただきました。
とのことです。
一般的にマンネリに陥りがちな2番のサビにもかかわらず、斬新な映像のおかげで飽きない動画になったと思います。冬眠しますさん、素晴らしい背景動画を作っていただきありがとうございました。
・間奏① | 03:17~03:41 | あるくおすし
小窓の中と背景の両方を僕が担当しました。間奏のメインで使われているストリングスは6話のEDをサンプルして作っているので、6話のCパートをメインにシーケンスを組みました。
この回の空気感が伝わるように、波紋を広げたりオレンジ色のライトリークを比較(明)で合成したりして浮遊感を出しています。
顔を隠す線はGimpのブラシを変えてワシワシしたものを使っています。ボカロのPVとかでよく見るアレです、アレ。
輪郭のあやふやな背景は、おなじみのキャッシュ保存RMを使ったモーションブラーを使っています。みんなもキャッシュ保存RM使おう。
尾を引くような円は流れ星をイメージしたつもりです。
・間奏➁ | 03:41~04:05 | オンモコスブ(小窓/背景), あるくおすし(背景)
小窓はオンモコスブさんに担当してもらいました。背景は間奏①をループした上にオンモコスブさんが作った映像をオーバーレイし、さらにいくつか要素を加えたものになっています。
背景の左右に登場する長方形はリードシンセの音程に同期しています。水音に対応して短くなる線は値で図形で作った線に円形配置(アニメ-ション効果)をかけて作りました。
非常にトリッピーなこのフッテージはオンモコスブさんがBlenderを使って作ったものです。
・3番① | 04:05~04:11 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景)
ここからアウトロまでは、オンモコスブさんが小窓をつくり僕が背景を作るというパート振りが続きます。なのでここでは背景を作るときに使った技術や作業工程について話したいと思います。
1~2番までの抽象的な絵作りとは違い、3番からはアニメ本編や自前の実写を使った、より具象的な画面構成を意識しました。例えばこのパートで映っているテトラポッドは、僕が海に行ったときに撮影したものになります。
iPhoneでも十分きれい
水滴のようなオブジェクトはチュートリアルを見て作ったアニメーションに適当なHDRIを適用して作っています。Molten Chromeっぽくなっちゃったので2値化をかけて馴染ませています。
・3番➁ | 04:11~04:16 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景)
真ん中の模様は心電図をイメージしていて、別のシーンで作ったモーションをRootで呼び出してループさせました。また、このシーンの背後にある水の紋様は、僕の父親が海で撮影した動画にopencvスクリプトのエッジ抽出をかけたものになります。
天然の色収差がとてもきれいですね。
ここの文字の演出僕も好きです(背景は4話14:45~あたりを使用)
・3番③ | 04:16~04:23 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景)
ここのシーンの背景にも実写映像を使いました。
パソコンの画面に写した星空をスマホで撮影したフッテージです。編集による付加では得られない自然な手ぶれが入っていて良いと思いました。
・3番④ | 04:23~04:28 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景)
背景には本編4話の11:41~を使用
文字のモーションはphritzさんの動画を参考にしました。
↓ルミナンスキーやエッジ抽出を多用していてとてもスタイリッシュです
・3番サビ① | 04:29~04:34 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景)
ラスサビにふさわしいように物量で攻めています。自分が持てる限りのアイディアを全部ぶつけました。
大量に降ってくる[Fruits]のモーションは
①画像化したテキストをイージング11番で下に移動させる。➁①を複製していい感じに散らばせる。③グループ制御下に置いてパララックス視差効果をかけ、Z軸で移動。
という感じで作っています
果実=リンゴ=知識=本
Workbenchで書き出して pattern dither を掛けています。
きれいな水滴は第1話07:12~を使用しています。これじつはユーリの涎なんですよね。
この謎めいた水滴は3番①で使ったウィグルアニメーションのパラメータを少し変えたものです。
放射状・同心円状の構図を意識してつないでいます。(5話14:41~)
ここのユーリ、Supercarのaのジャケットみたいで好き
・3番サビ➁ | 04:34~04:40 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景)
第2話の15:12~と第11話の00:01~を使用。
デザインにBrutalismっぽさを取り込みたかった。
第2話19:46~を使用
英字新聞のテクスチャはDevianartで見つけました。
https://www.deviantart.com/serendipify/art/NEWSPAPER-TEXTURE-PACK-1-505315382
・3番サビ③ | 04:40~04:47 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景), ねこぱら(アニメーション)
前景の涙、雨、記憶などのつながりがきれいですね。
第1話11:48~, 第3話12:42~, 第2話17:22~を加工して組み合わせています。
文字のモーションは使いまわし。
歌詞に合わせて乗り物を出している(厳密にいえばRider≠乗り物)。
ねこぱらさんによる手書きアニメーションを使っています(ねこぱらって誰?)。
・3番サビ③ | 04:47~04:53 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(背景), ねこぱら(アニメーション)
今までずっと背景にあった文字のモーションが小窓に絡む演出が結構気にっているシーンです。
「螺旋」を映像に取り込みたかったので、ねこぱらさんが描いた螺旋階段のアニメーションを左右に配置しています(ねこぱらってマジで誰?)。
Blenderで作った惑星的な何かに第1話9:11~あたりのフレアを合成しています。パスに追従するタイプのカメラワークをここで初めてやりました。
このシーンもねこぱらさんのアニメーションを使っています
Aodarumaさん作のRepeaterと標準の図形で作った波模様です
僕たちは所詮遺伝子の乗り物.…..。
やけにディティールの細かいDNAはオンモコスブさんに作ってもらいました。下のチュートリアルをやればできるらしい。
円形配置の個数を1つにしたものを円(図形)に適用し、半径を同じにして回転したものを120°ずつずらして三角形の頂点を作りました。辺を構成する三角形にはクリッピングをかけています。
・アウトロ① | 04:53~05:19 | オンモコスブ(小窓), あるくおすし(小窓/背景), Lixy(詩)
このパートは僕も小窓の制作にかかわっています。
小窓のなかで1番と2番のサビと間奏の振り返りをやっています。ルミナンスキーや合成モードを細かく変えて合わせています。
背景にはLixyさんに書いてもらった詩を使っています。これらの詩は、アニメのサブタイトルを使って作られています。
素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
フォントはフォントワークスが無償で配布している筑紫Bオールド明朝Bを使用しています。
テキストが複数個あると処理が重くなってしまうため、キャッシュテキストを使って負荷を軽減しています。
それに平仮名小さとTA-Easingの入/退場順を2番に設定したものをかけています。
この奇妙な画像はアニメのシーンを切り抜いてAod_test47というスクリプトをかけて作っています(ルミナンスキーの閾値を変化させながらZ軸方向に画像をループさせるスクリプト)。
スクリプトファイルにしました〜〜
— Aodaruma (@Aodaruma_) March 30, 2018
詳細はスクリプトをメモ帳で開くとありますhttps://t.co/nlFsbpmd4m pic.twitter.com/BqBwdqOT1X
素材はサムネにも使った画像です。髪の毛の切り抜きが結構大変だった。
・アウトロ➁ | 04:53~05:19 | オンモコスブ, あるくおすし, 尾木メモ(切り抜き)
背景・小窓共にオンモコスブさんに作っていただきました。水滴の使い方が素晴らしすぎる。
このシーンの小窓は尾木メモさんが切り抜いた漫画のコマをオンモコスブさんがコンポジットしたものになっています。お二方とも仕事が丁寧です...。
最後のシーンは僕の担当です。アニメの複数のシーンを重ねて静止画MAD風にコンポジットしました。色調補正は簡易トーンカーブと色ずれを使っています。
切り抜きが大変だった
その他リファレンスなど
制作期間中に繰り返し見ていた映像やほぼパクってる映像まで雑多に集めました。
PORTER ROBINSON NURTURE LIVE @ SECRET SKY 2021
↑いろんな意味でめちゃ影響受けてます
もうじき神無月だ(音MAD)
↑支配的なオブジェクトと2画面構成
Diki Diki Ding Ding(AMV)
↑少女終末旅行のAMVは結構見ました。これがダントツで好きです。
Francisco Quiles - Walls
↑点滅の多用や動きのつなげ方は全編通して影響を受けています。
Kabanagu - 泳ぐ真似 (Album Trailer)
↑phritzさんの映像はもう僕の中での2021の形を完全に決定づけてしまった。
Olga Bell - ATA
↑間奏のトリッピーなフッテージはこれの影響。
Cornelius - "Star Fruits Surf Rider"
↑本家のライブ映像です。古臭くていい。
Max Cooper - Resynthesis (official video by Kevin McGloughlin)
↑冒頭のフィードバックを使った構成はこれの影響。
rei harakami - joy
↑繰り返しが気持ちい。めっちゃかっこいい。
Tohji, Loota & Brodinski - Naked [//Visualiza]
↑レンズの歪みとか意図的に入れるのかっこいいですよね。
Porter Robinson & Totally Enormous Extinct Dinosaurs - Unfold (Official Lyric Video)
↑異なる種類のフッテージがとてもうまく混じっている。
Angel Beats! 予告集
↑かっこいいので良く眺めてました。
最後に
いや~~~~~~~~~(クソデカため息)
匿名性由来の変なプレッシャーをず~~っと感じていたので、素性を明かす日を待ち望んでいました……。「とんでもない奴が一人で作っている」みたいな雰囲気になっていましたが、内実は割と泥臭い共同作業の結晶だったりします。
10選で個人作枠として投票していただいた方には申し訳ない気持ちです……。欺くような真似をしてごめんなさい。もう少し早めに正体を明らかにしたかったんですが、匿名でやる楽しさにかまけて途中から後に引けなくなっていました。来年はもっと精神衛生上いい創作がやりたい。
最後に私事というか僕のこの動画に対するお気持ちなんですけど、この動画が現時点での僕の最高傑作だと思っています。無論一人で作った作品ではないにしろ、発案と呼びかけから始まり、製作の中でイニシアチブをとれたことは自分の中で大きな自信になりました。
もともと海遊びや星空を見ることが大好きな人間なので、自分の精神を形作るものを何らかの形で映像にできたのは本当にうれしかったです。3番の背景とかやってよかったな~って今でも思う。
あのアカウントの作品は、いろんな人がいろんな思いを込めて作っているので一つ一つ丁寧に見ていただけると嬉しいです(↓マイリス)。
あと、高音質の音源をBandcampで配布してるので、欲しい人は落としていってくださいね。